外国人労働者の受け入れで工場は変わる?『特定技能ビザ』を知ろう!

外国人労働者の受け入れで工場は変わる?『特定技能ビザ』を知ろう!

何かとニュースで話題になる「1号・2号」。
ロンドンブーツではなく、「特定技能」制度のことですヨ。
当制度については「日本人の仕事が奪われる!」との声を聞きます。
ホントのところはどうなのでしょうか。
特定技能ビザについて、ざっくり解説いたします!

ビザ無しはアウト!実は難しい日本での労働

毎日のように、テレビのニュースを賑わせる「少子化」「高齢化社会」の話題。そして、それらに伴う「労働力不足」。行政が何ら対策をしてこなかったクセに、若者のせいだけにしないでくれる?と思ってしまうものの、深刻な問題のため、しっかり考えて対応していかなければなりません。

政府は、この「労働力不足」を解消するために、何年も前から「外国人材(外国人労働者)の受入れ」政策の策定を進めてきました。その政策の1つに、新たな在留資格である「特定技能」の創設があります。

さてさて、何かとメディアを騒がせている「特定技能」。一体、何者なのでしょうか。

2019年4月から実施され、簡単に言えば『特定の分野において、外国人の就労を可能にする、および促進させる』在留制度を指します。つまり「長期間の就労がOKで取得の難度も低い在留資格(ビザ)を、新たに作りましたよ」ということ。
ちょ~っと分かりにくいですよね。順を追って説明しましょう。

※特定技能資格は2018年11月時点でも検討中の部分があり、記事執筆時点の内容と異なる場合があります。

日本を含む多くの国では、外国人がその国で就労する場合には「就労ビザ」と呼ぶ特別な資格(在留資格)を取得する必要があります。「不法労働者を検挙」というニュースを見たことがありませんか?これは「就労ビザ」が無いか期限切れの状態、もしくはビザで認められていない業種などで働いていた人を捕まえたということ(滞在のためのビザが無い・期限切れも同様)。
そう、外国人がビザ無しで働くと、警察に捕まってしまうのです
就労ビザには15日間、6カ月間、3年間などの期限があり、厳格な審査によって適した期限が付与されます。

また、就労ビザを取得すれば、どういった職業にも就けるのかというと、そうではありません。就労可能なのは「教授・技術・文化・芸術・報道・宗教・工業」などなど、限られた職種や業種、勤務内容のみ(下図参照、法務省入国管理局の資料より抜粋)。留学生のアルバイトなどは、また別の制度です。

ここで重要なのが『就労ビザでは単純労働に従事できない』ということ。単純労働とは「高度な知識を要さない仕事」とされており、工場のお仕事や建築関係などが含まれています。つまり、原則として工場では雇ってもらえないというワケですね。

「あれ、うちの工場には外国の人が働いてるよ」という方も居るでしょう。それは「外国人技能実習制度」と呼ばれる在留制度を利用しているのかもしれません。
外国人に日本の「ものづくり」の現場を体験させ、その技術や知識を自国に持ち帰り発展に貢献してもらおうという取り組みのことで、この制度なら単純労働が可能です。ただし、最長5年と就労の期限が決められています

このほか「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」のいずれかの在留資格があれば、就労の制限はなくなります(永住者以外は在留期間あり)。

長くなりましたが、要約すれば「外国人が日本で働くにはビザが必要で、思いのほか難しい」ということですね。

これを緩和するために新しく創設されたのが「特定技能」の制度というワケです。

特定技能なら工場でも働けます!

さて、特定技能には「1号」と「2号」の区別がされています。まずは1号を取得した後、いくつもの条件をクリアしたら2号へと移行が可能です(予定)。

従来の就労ビザでは就業する業種によって「高いレベルの語学」や「実務経験」などが必要でした。
ところが、特定技能資格では、それらのハードルが大幅に下げられています
その条件とは以下の通り(図は法務省入国管理局の資料より抜粋)。

特定技能1号

例えば語学については

「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有すること」が条件。

ビジネスレベルの日本語能力は不要で、英語などが話せなくてもOKです。

さらに、実務経験や学歴などの条件は「原則不問」
ただし、在留期間は『最長5年で更新不可』。家族を連れてくることも『不可』です。

就業可能なのは

産業機械製造業、電子・電気機器関連産業、飲食品製造業、造船・舶用工業、自動車整備業、建築業、漁業・農業

などの14業種。単純労働にバッチリ対応していますね。

特定技能 1号の資格を取得するには

  • 最長5年の技能実習を終了する
  • 技能と日本語の試験に合格する

上記のどちらかをクリアしなくてはなりません。

就労のハードルが低くなったとは言っても、厳格な審査があります。
外国人の誰もが、すぐに製造業などに就けるというワケでは、決してありません

特定技能2号

特定技能 1号を取得した後に、より高度な試験に合格するほか、本人の技能が「熟練している」と認められた場合には「特定技能 2号」資格が与えられる可能性があります。
2号は「在留期間の更新が可能」「家族の帯同が可能」「条件を満たせば永住申請が可能」など、1号よりも待遇面が強化されているのが特徴的ですね。

その分、取得が非常に難しく、就業可能な職種も「自動車整備業」「造船・舶用工業」「航空業」「建築業」「宿泊業」の5種に限定。政府からは「厳格な運用」を求められており、記事執筆時点でも内容が固まりきっていない状況です。

まとめ

特定技能資格が従来の就労ビザと異なるのは、ざっくりと以下の3ポイント。

「一部の単純労働に就労できる」

「資格取得のハードルが下がった」

「2号は在留期間の延長や永住申請ができる」

この制度により工場の環境が変わるのかと言えば、「一部業界の工場は変わらざるを得ない」というのが実際のところではないでしょうか。
例えば車体の製造は就業可能業種に含まれていないため、変わりはないかもしれません。ですが、カーナビなど車載機器の製造工場は「電子・電気機器関連産業」になり得ますので、特定技能資格を取得した方が入社してくる可能性があります。食品工場も就業対象に含まれていますね。
こうした工場では外国人労働者受け入れのために、社内規定や案内表示、作業内容や方法などが変更となる場合があります。もしかしたら、食事や勤務時間など、仕事内容とは関係ない部分も変更される能性も

では「外国人に仕事が奪われる」という意見はどうでしょう。これは「2018年11月時点の内容ではNO」です。ビザの取得は簡単なものでなく、それは特定技能も同じ。取得のハードルを下げたとはいうものの、いまだ難関であることに変わりはありません。そのため、「外国籍の方が大挙として押し寄せ、就業していく」といった事態にはならないと予想されます。特定技能 1号は在留期間があるし、特定技能 2号へは、正直に言って「かなりのエリート」でないと移行できません。2号の永住申請が許可されるのも、記事執筆時点での政府の見解では「非常に困難」としています。

一部の工場では、確かに働き方が変わるでしょう。ですが、実際にはそこまで大きな変化は感じられないかと思います。工場では今までも外国人労働者の受け入れを実施してきているからです。今回の制度で「真面目で勤勉な外国人労働者」が増えてくれれば、それは日本経済の再生にとって、良い刺激になるのではないでしょうか。グローバルな時代を楽しみつつ、ものづくりの現場を守っていきましょう!

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